特別論文 精神医学の基本問題—精神病と神経症の構造論の展望
第5章 フロイトの神経症構造論
内村 祐之
1,2
1東京大学
2財団法人神経研究所
pp.836-844
発行日 1970年10月15日
Published Date 1970/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201664
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前章において,神経症理論の発展に寄与した3人の研究者と,その業績との素描を試みたが,この3人の中で,後の時代に対し,飛びはなれて大きな影響を与え,かつ理論構成の上で最も独自なものを持っていたのがフロイトであったことは言うまでもない。そこで本章では,神経症の構造に対するフロイトの考え方の中核を,彼自身の筆を借りて紹介したいと思う。その素材として,私は彼の尨大な著作の中から,1917年に出版された「精神分析学入門」中の神経症総論を選んだ。この著作は,彼の比較的平易な講義を編集したものではあるが,60歳になった老成期のフロイトが,それまでに到達した見解をここに凝集したと見なされるもので,フロイトを展望するには最適なものと思われるからである。なお引用文としては,懸田克躬博士訳のもの(中央公論版)を使わせていただいたが,原文と対照して多少の変更を加えた個所もあることをお断わりしておく。
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