特別論文 精神医学の基本問題—精神病と神経症の構造論の展望
第9章 オイゲン・ブロイラーとアドルフ・マイヤーの対照
内村 祐之
1,2
1東京大学
2財団法入神経研究所
pp.212-220
発行日 1971年3月15日
Published Date 1971/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201717
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ブロイラーとクライスト
クレッチュマーとクライストとの構造論を紹介した第8章の終段で,私は,クライストの脳病理学的局在学的構造論へのヤスパースらの批判に対し,クライストが,すさまじい剣幕で反撃している言葉を引用した。これは,当時の学界の事情を反映する1つの姿にすぎないが,その際立った意見の対立の様子は,精神病の構成という基本問題に対してさえ,これほどまでに異なった考え方があるのかという強烈な印象を,読む人に与えずにはおかぬものであった。
そこで,ここでは順序としてヤスパース自身に出馬を願いたいところだが,私は敢えて衝撃緩和の意味で,オイゲン・ブロイラーの精神医学をここで紹介しようと思う。そして次に,精神分裂病についての新理論を提供したという点でブロイラーと共通点をもつアドルフ・マイヤーを取扱ってみたいと思うのである。
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