特別論文 精神医学の基本問題—精神病と神経症の構造論の展望
第6章 クレペリンの精神病構造論
内村 祐之
1,2
1東京大学
2財団法人神経研究所
pp.926-934
発行日 1970年11月15日
Published Date 1970/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201675
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前5章の梗概
ここでまず,さきに5章にわたって述べてきたところを短く総括してみよう。この中で私が目標としたのは,精神医学の近代的研究の幕明けである1800年の後半以後から,1914年の第1次世界大戦開始前のころまでにかけて,クレペリンとフロイトとを2つの中心として,現代の精神医学の一応の理論と体系との基礎が形造られた経路を,その間に出た傑出した研究者の所説を簡単に紹介しながら回顧することであった。そしてその際,特に私が注意を引かれたのは,狭義の精神病の研究と,神経症についての研究が,当初はそれぞれ別個の研究者の手によって行なわれたことである。
すなわち精神病の研究は,精神病院に収容されている重篤な病者を対象として,主として精神医学者がこれを行なった。そして彼らはグリージンガーやウェルニッケらの研究を基として,精神病を脳疾患として,あるいは身体疾患の表現として捕えようと努力したのである。これに対し,神経症の研究では,一般病院に多数混入している患者が主たる対象とされ,シャルコーのヒステリー研究,とりわけ催眠術応用の研究が端緒となって,主に神経病学者の手によって研究が進められたのであった。
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