特集 医療危機と精神科医—第6回日本精神病理・精神療法学会 討論集会をめぐって
学問の両極性と精神医療の実存的契機
小木 貞孝
1
1上智大学文学部教育学科心理学
pp.102-104
発行日 1970年2月15日
Published Date 1970/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201568
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討論集会に対して私はとにかく自分の全力をこめて《実行委員会》の諸君と討論することに努めた。それは,私が今年ぐうぜんに運営委員であり,実行委員会の直接の批判の一面が運営委員会に向かってなされていたこと,一般討論を中止して討論集会にきりかえることに賛成した責任を一般会員に対してとりたいと思ったからである。新福委員長の出されたアンケートの回答によれば,55%,465の回答で討論集会に反対する人々が242名いたという。これは849名の全会員のうち半数にも満たない。しかし,とにかく討論集会に反対した人々がいたということは事実で,私はやはりこれらの人々に対しても責任をとりたいと思った。討論集会を開くからにはそれを実りのあるものにしたい,それが私の願いであった。
それにしても一般会員の無関心さが私の心に重く影を落としていた。849通のアンケートに対して,なぜ465名の人しか回答がなかったのか。回答を寄せなかったあとの384名は何を考えているのか私には不思議であった。つぎに,評議員の出席者が半数にも満たなかったことは私にショックを与えた。少なくとも学会の存続や将来の帰趨をきめる評議員が,もっとも重大な学会の危機に姿をみせない,これでは若手の諸君の憤激をかっても仕方がないと思った。それからもう一つの驚きは,討論集会に長老会員がほとんど姿をみせなかったことである。終始熱心に参加された村上仁,井村恒郎,新福尚武,三浦岱栄の諸氏をのぞくと教授方や学会の責任者はまったく姿をみせない。討論集会を逃避しておられるのか軽蔑しておられるのかわからないが,このことはやはり大きな事実として記録にとめておきたい。
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