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Ⅰ.アメリカにおける自殺学と自殺学会
アメリカにおける自殺研究の動きは,2方向に向かつていると考えてもよい。その1つは,自殺をアルコール中毒,薬物依存,過喫煙,ある種の交通事故などとともに,大きく自己破壊行動の一端としてとりあげ,その要因をひろく近接領域との関連のなかに掘り下げようとする動きであり(これにはEdwin S. Shneidmanの近著Self-Destruction,Science House,1968.がある),もう1つは,自殺そのものを他の現象(症状)から切り離して,単独にとりあげようとする動きである。自殺が種々の要因から生ずるという観点に立てば,後者のいきかたはやや特異な感じを与えるが,これまでの自殺対策の歴史をかえりみたとき,このいきかたは理由のないことではない。すなわち,自殺の関連領域を拡大すると,どうしても焦点がぼけてしまい,自殺防止機関がいつのまにか,自殺問題を含めた諸種の問題を取り扱う精神衛生センターになり,結局は自殺問題が種々の問題の影に隠れて消滅してしまうおそれが生じてくる。
この意味から,アメリカにおける自殺の研究・対策が上記2方向に発展し,ともに成果をあげていることは非常に意義深いことである。ところで,アメリカにおいて過去数年をとおして,もつとも関心を集めた社会問題の1つに,自殺学(Suicidology)とよばれる新しい専門分野の開発と発展がある。設立の立役者であるEdwin S. Shneidmanによれば,自殺学とは,人間の自己破壊行動と関連した科学的・人道愛的研究である。これは新しいことばであり,1966年に初めて使用されたが,現在ではアメリカの種々の分野でひろくもちいられている。これには以下のものが含まれている。
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