動き
チャド・ヴァラー博士の講演をきいて—自殺防止とサマリタンス活動
稲村 博
1
Hiroshi Inamura
1
1筑波大学社会医学系精神衛生学
1Dept. of Social Psychiatry, Univ. of Tsukuba
pp.647-653
発行日 1977年6月15日
Published Date 1977/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202630
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I.はじめに
1976年2月24日,東京において,有名な自殺防止機関「サマリタンス」(The Samaritans)の創始者チャド・ヴァラー(Chad Varah)博士の講演会が催された。博士の来日はかねて待望されていたが,社会福祉法人「いのちの電話」の招きにより,このほど実現した。近年わが国にもようやくたかまりつつある自殺防止や電話カウセリングの活動に与える影響は多大といえる。
博士は,Oxford大学で哲学,神学などを修められたあと,心理学を学ばれ,第一線のカウンセラーとしてその後長く地道な実践を続けられた。「サマリタンス」もこの実践から生み出されたものである。
「サマリタンス」活動は,1953年11月2日にロンドンで始められ,以来飛躍的発展を遂げてきた。今日ではイギリスに165支部と1万8千余人のボランティアがおり,またイギリス以外にも100カ所に余る支部があるという。世界各国にさまざまな類似の機関がある中で,電話の導入による自殺防止の組織的活動として歴史的役割を果たし,また自殺の防止効果に画期的成果を収めている点特筆される。
当日の講演は,具体的実践的なものであり,平明ななかに強い情熱と個性の盛り込まれた感銘深いものであった。以下まずその要点を略述し,つづいて必要な解説と考察を加えたい。
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