連載 ニュースウォーク・103
法で動くか,自殺防止対策
白井 正夫
1
1元朝日新聞
pp.846-847
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100327
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横浜のわが家には仏壇がある。大きくも小さくもなく,八畳間にうまくおさまっている。2年前,新潟で独り暮らしだった母が亡くなり,長男の私が過去帖つきで引き取った。浄土真宗の門徒だった母を思うと処分できなかったのだが,全員が越後生まれのご先祖も横浜暮らしになるとは,さぞ面食らったことだろう。
十数年も前になる。新潟の中学校の同級会で,保育園長をしている女性から「先生も立派ですね。いのちの電話のボランティアを続けて…」と言われて驚いた。先生とは,教師をしていた母のことである。初耳だった。高齢になっても短歌と草花を楽しみにしているとばかり思っていたのに,思いがけないことだった。
母は「いのちの電話」の話をしないまま逝った。しかし,老いの身を動かした気持ちは何となくわかる。仏壇に聞いてみても,返事はないが。
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