Japanese
English
研究と報告
宗派と犯罪—その社会精神病理学的考察
A Socio-Psychiatric Study on the Crime and Religious Sect
小田 晋
1
Susumu Oda
1
1東京医科歯科大学犯罪心理学教室
1Dept. of Criminal Psychology and Forensic Psychiatry, Instiute of Forensic Siences, Tokyo Medical and Dental Univ.
pp.827-831
発行日 1968年10月15日
Published Date 1968/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201396
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
われわれは,近年本邦で急速に発展し,信者650万世帯を有するにいたり,政治・文化的方面でも大きな影響力をもつにいたつた日蓮宗系の新興教団である1仏教分派(仮称N-S宗派)の信者の呈する精神障害と病態との関係についてさきに報告した。今回は同宗派の信者の犯罪例で信仰,精神障害,犯罪の3者の相互関係の認められるもの4例を選んで,社会精神病理学的な考察を加え,同宗派の教義,信仰形態,組織との関連性を検討した。4例は精神医学的には,てんかん1,精神病質1,うつ状態1,心因性葛藤反応1である。同宗派信者は,社会における少数派集団の1つとして,集団外に対する敵意,攻撃性を蓄積し,これが反社会的行動として放散される場合があること,同宗派の有するヒエラルヒー的組織が組織と人問性との葛藤をまねき,危機犯罪の副次的原因となることがありうること,同宗派の教義のもつ「正法と三障四魔の闘争」という概念が,たとえばてんかん性もうろう状態における傷害事件の1契機となつた場合があることなどが明らかになつた。信仰は犯罪に対してはむしろ阻止的にはたらくとされ2)7),同宗派の場合も,信者全般についてはそうであるとも考えられ,症例においても,信仰が犯罪の主要原因となつているとはされないが,特殊の信念を有する少数派集団の社会病理として,このような事例が認められたことを報告した。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.