シンポジウム 大都市の病理と精神障害—東京都精神医学総合研究所第2回シンポジウムから
都市問題の社会精神病理学的側面
小田 晋
1
1独協医科大学精神神経科
pp.470-478
発行日 1976年5月15日
Published Date 1976/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202477
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I.はじめに
都市問題の文脈の中で,人間の心の問題,とりわけ社会精神医学的な問題が取り上げられることになったこと自体が現時点における都市問題のひとつの特性を示すものといえる。つまりそれは,現代日本の社会が最近様々の面において遂げている著しい変化が,国土の自然的生態,社会文化的状況,および住民の身体および精神の衛生,住民の世論および感情,行動に及ぼしている影響の逆反映であって,いたずらに鉄とコンクリートによる機能化と建設物の威容を誇るといった現代都市のありかたが,住民にとって耐え難いものになりつつあることを示しているといえるであろう。もし,そうであるとすれば現代の都市のもつ諸機能に対する人間的,特に心理的側面からの要求はどう消化され,実現されうるであろうか。そのために必要な現状認識のひとつのステップとして,まず現代日本で起きている社会変動が人間の心に与えつつある影響を考えてみたい。その中でもとりわけ,社会病理学的現象を媒介に接近するのがこの場合の課題であろう。
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