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研究と報告
海外留学生の精神医学的問題(その1)—留学中の精神障害例ことに精神分裂病とうつ病について
Psychiatric Problem of Students Sent Abroad for Study: 1. A study on mental disturbances, especially schizophrenia and depression, during staying abroad
島崎 敏樹
1
,
高橋 良
1
Toshiki Shimazaki
1
,
Ryo Takahashi
1
1東京医科歯科大学医学部神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiat., School of Med., Tokyo Medical and Dental Univ.
pp.564-571
発行日 1967年8月15日
Published Date 1967/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201228
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Ⅰ.まえがき
戦後わが国から研究や勉学のために諸外国へ出かけ,滞在する研究者や学生が増加していることは,われわれの身近かに知つていることであるが,外国のなかでも米国へ留学する人々の数がきわだつて多いことも周知の事実である。海外生活を体験した人々の多くは,新しい環境に適応するまでの間,なんらかの身心上の困難や症状を感じるものであるが1),その後大多数の人々はとくに問題もなく帰国している。しかし留学生も多くなると,なかには精神障害を呈して,本来の留学の日的を追求しえなくなる不幸な例も見られてくる。留学のみでなく戦後国際間の移住交流が増加するにつれ,海外生活上の精神衛生も精神医学の一つの問題となつてきた。そこにおいては異国民の接触や異なる国民性,民族性,文化,言語などの相互作用の間に現われてくる心理学的,精神病理学的諸問題,「異国人」の心理,気候風土の精神に対する影響,精神病の誘発の問題,休暇の心理学など,多くの問題が内在している2)。
われわれは米国在日教育委員会(フルブライト委員会)の依頼で,わが国より米国に留学中のフルブライト奨学生のなかで,精神障害を呈したとして送還されたケースをすべて診察治療する機会をもつと同時に,文部省調査局国際文化課の斡旋で渡米する交換高校生(A. F. S.=アメリカンフィールドサービス)についても同様な症例を診察し,毎年出発する高校生の精神衛生について講義を依頼されてきた。
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