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特集 創造と表現の病理
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
Ⅱ部・病跡
「大いなる正午(Grosser Mittag)」体験(ニーチェ)について
Über: "Grosser Mittag" Erlebnis
霜山 徳爾
1
Tokuji Shimoyama
1
1上智大学
1Sophia Universität
pp.333-339
発行日 1967年5月15日
Published Date 1967/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201194
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Ⅰ.「世界」喪失体験
従来の精神病理学においては,その文学的表現が少なくない分裂病における世界没落体験や,種々のうつ状態における厭世的虚無的気分のごとき,世界に対する否定的体験についての,すぐれた現象学的知見はかなり存している。このような「世界」喪失への危機感につらぬかれた体験の研究は,一つには治療上の要請と,ほかには危機感に生きる現代人の社会心理とも連関して,大きな意義をもつていると考えられるが,さらに創造とその病理とに関連づけるとき,いつそう興味深いものになつてくる。「なぜに分裂病の初期にはなはだしばしば宇宙的な,宗教的な,形而上学的過程があるのか。これはきわめて印象深い事実である。崇高な会得,地上にはけつしてありうるとは思えなかつた感動的楽奏,創造的なもの……これはけつして精神病の性質から把握されるものではない」とヤスパースは述べている。しかしこれは分裂病の場合にかぎつたことではない。うつ病的世界でもデューラーの「偉大なる憂愁者」は現実にたとえばマルチン・ルッターの陰うつな創造のうちにその翳をおとしている。
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