シネマ解題 映画は楽しい考える糧[86]
「大いなる休暇」
浅井 篤
1
1東北大学大学院医学系研究科社会医学講座医療倫理学分野
pp.778
発行日 2014年8月15日
Published Date 2014/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414103320
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働くことの尊厳を考える
カナダの作品ですが,近くの大都市がケベックということもあり,登場人物は皆フランス語を話しています.舞台は廃れた漁港の島サントマリ島で,現在の全人口は125名.ほとんどの島民は生活保護を受けており,島を出て仕事を探す人々もいます.携帯電話は圏外.そんな島に工場誘致の話が舞い込み島民らは大喜びですが,ひとつ条件がありました.島に常勤医師がいること.この島には過去15年間医師がいなかったのです.そんな折,33歳形成外科専門のルイス医師がスピード違反と違法薬物保持で捕まり,サントマリ島で1カ月間の社会奉仕を命じられ来島しました.作品ではルイスを島に留めて島医にしようと,島民らがあの手この手で奮闘する様がユーモアたっぷりに描かれます.
笑いごとではないのに笑ってしまうとは,この映画のことを言うのでしょう.一応は工場誘致のために医師を探しているのですが,医師がいなかった15年間の島の医療はどうなっていたのでしょうか.きっと皆困っていたに違いありません.ケベックであれば助けられたはずの命が失われたかもしれません.現にルイス医師が診療を始めるやいなや,島民が殺到し,診療所は大混雑でした.それだけ差し迫ったニーズがあったのでしょう.地域での医師不足が明らかになり,泥縄的に右往左往しているわが国も他人事ではありません.
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