特集 精神分裂病の診断基準—とくに“Praecoxgefühl”について
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
指定討論
霜山 徳爾
1
1上智大
pp.128-129
発行日 1967年2月15日
Published Date 1967/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201156
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簡単に申しあげます。3人の演者の方々から,いずれも意義深いご意見を承わりましたが,なかんずく,木村先生は非常にたいせつなことを指摘されたと思います。たしかにPraecox感情ないし体験というものは,分裂病者と出会う時点における直接の所与ではありますが,その背後には,いかにして他者の内面の了解が可能であるかという,自と他の関係である人間の根本問題がひかえているのでありまして,この仙者の理解ということを掘り下げなければ,このPraecox体験の問題も解決しないのではないかと存じます。そして木村先生が自覚的現象学というこころみで,この問題に迫ろうとされたことに敬意を表したいと思います。このような理論的考察は,単純なビオロギストにはしばしば「言葉の遊戯」としかうつらないのでありますが,実は臨床精神病理学というものは,単に臨床に流れず,つねにその理論的基盤に深い考察を加えてこそ実り豊かになるものだからであります。
ところでPraecox体験というものの本質は,人間の現存在の根源的なありかた,すなわち,つねに他に向かつてひらかれ,他に向かいあつているDuheitにおいて初めて「我」があるような存在理解の内に生きているというありかた……このような人間的な規定における「我」のほうの特殊な体験なのだと存じます。
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