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研究と報告
20年後の予後調査からみた戦争神経症(第1報)
War Neurosis; 20 years follow-up Study
目黒 克己
1,2
K. Meguro
1,2
1慶応義塾大学医学部神経科
2国立精神衛生研究所
1Neuropsychiatry Keio University School of Medicine
2National Institute of Mental Health
pp.999-1007
発行日 1966年12月15日
Published Date 1966/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201123
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I.まえがき
神経症という病気が,素因と環境の両面から理解すべきものである事実は周知のとおりであるが,この問題を組織的に解明する一つの方法として,長期間にわたつて,同一人物の神経症の経過を追求するこころみがあげられる。
神経症の予後調査について:
このような観点からみた場合,いわゆる戦争神経症の予後調査は,第一にそれが戦時,軍隊,戦場などの特異な社会的時代的な条件を契機として発生したという点,第二にそのような特異な状況が去つた一般社会のなかでの戦後20年間のわが国の社会文化的条件の推移に伴つてこれらの人々の神経症がどんな変わりかたを示しているかは,神経症と社会文化的環境の関係を解明する一つの手がかりとなるという点,第三に神経症の,いつたいどんなレベルがこのような社会文化的変動の影響を受けるか,どんなレベルが比較的不動であるかを調査する機会となるという点で,さまざまの興味ある精神医学的問題を含んでいる。すでにわが国でも,戦争神経症と社会文化的な環境について,井村1)が言及し,一般神経症の社会文化的条件の推移に伴う病像の変化について桜井,西園2)らの報告があり,また神経症の予後調査について中川3),大原4),またこの問題をいわゆる症候移動(Syndrome Shift)の観点から組織的に研究している小此木5)の報告がある。
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