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I.はじめに
私は上記表題のもとにたびたび講演をしたり,また記事として雑誌にのせたことがあるが,その大部分は通俗講演であり,または宗教雑誌においてであつて,本来精神医学のくわしいことを知らぬ大衆を相手としたものであつた。多少アカデミックな論文としては,「精神医学最近の進歩1)」に寄せたものがあるだけである。これも与えられた紙数に制限があつたため,この重要なテーマについての単なる形式的の輪廓を示すに終つたいたつて不満足のものであり,肉づけの豊かな論文を書くことは他日にのこされたのであつた。たまたま本紙の展望欄に本題について執筆することになつたのは私にとつて光栄であるとともに欣快とするところであり,今回は"少しはましなもの"が書けるのではないかと思う。
ひるがえつて考えるに,このテーマの取り扱いかたもいろいろのパースペクチーブから可能であり,そのすべてをここで取り扱うことはできない。展望欄での執筆という制約を考えれば,鳥瞰図(Rundschau)的な,多くの著者らの記述を紹介あるいは批判するのがほんとうかもしれない。これは大変な労を必要とするのであるが,筆者の"性"には合わないし,また多くの文献を渉りようするだけの時間もない。いいわけめくが,これではやはり百科全書的な知識を読者に提供するにとどまり,著者本来の見解がうすくなることはやむをえない。したがつてまた,この後者の点に重点をおく論文もあつてよいと思うのだが,それでは"展望欄の記事"にはふさわしくないかもしれない。そこで私はこの両者の中間をゆくことに決心したが,重点はどうも"著者のパーソナルな見解"を前方におし進めるという方向におかれることになりそうだということをあらかじめお断わりしておく。
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