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東ニューギニア高地の住民は,人種的には純粋のパプア人であり,海岸地帯,とりわけ北および束沿岸地帯でみられるような「ミクロネシアあるいはメラネシアと混血したパプア人」は,高地には存在しない。また言語学的には,メラネシアあるいはポリネシアとはまつたく異なつたパプア語というべき言語圏を形成している*(650ないし800にも分けうる雑多な言語がみられるのであるが)。さらに文化的には,たかだか30年ないし35年前まで,それにさかのぼること数万年もの間,まつたく外来文化の浸入なく,石器時代程度の物質文化生活がいとなまれていた。一言にしてヤップ(Yap)族と東ニューギニア高地のパプア族とは,人種的,文化的,言語的,歴史的にみて,なんらの関連をもつていないのである。
それにもかかわらず,八瀬の報告したKANとよばれる独特の類宗教現象にきわめて類似の現象が,東ニューギニア高地における伝統的文化として存在しているのである。すなわち私がかつて報告したように1),たとえば束ニューギニア高地チンブー地方のクマ族の人たちも,アニミズム的思考,死者崇拝,祖先霊の実在信仰を有しており,さらにかれらのうちに妖術師がいて,部落内の高い地位を占めており,部落民たちは,たとえば落雷,洪水などのときには,この妖術師に呪文をとなえてもらい,また近親者の死亡のときには,妖術師の託宜にもとついて,祖先の霊に神聖なる豚の血を捧げるのである。また妖術師は「耳で聞くことのできない言葉」によつて死者と交通することができ,あるいは降神術を行ない,その憑依状態において死者の言葉を語ることができる。さらに妖術師は,まじないによつて(似面非)医術をも行ないうるのである。
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