特集 内因性精神病の疾病論
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
指定討論
猪瀬 正
1
1横浜市大神経科
pp.11-12
発行日 1967年1月15日
Published Date 1967/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201131
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早発性痴呆という疾患単位がKraepelinによつて提言され,その後Bleulerがそれを精神分裂病―ただしかれはそれを複数で示したが―としてその概念はひろげられたが,それらの重篤な状態をみたならば,誰でも生物学的異常を感ずるであろうし,なによりも先に脳の病変の存在を思うであろう。そしてKraepelinやBleulerの時代には,そのような想定が支配的であつて,この疾患あるいは疾患群の脳の組織病理学的研究がその本態究明のための先鋒をつとめたのであった。
いうまでもなく,Nisslは,当時精神病研究の鍵としてRindenpathologie大脳皮質の病理学的研究を推進していたが,Alzheimerは,Nisslの共同研究者として,精神分裂病にとりくんだのであった。そして,かれの研究以来分裂病者の脳の所見としてあげられたのは,第1に大脳皮質にみいだされる巣性神経細胞脱落であった(Josephy,Funfgeldほか)。それは“Luckenfelder”間隙巣ともよばれたが,そこには神経細胞はないし,グリアの反応性増殖もない。しかし,その分裂病のSubstratと考えられた“Luckenfelder”はSpielmeyerやPetersによつて,精神的に健康であつた人々の脳にもみいだされることが示された結果,分裂病脳に特有なものではないし,したがつて分裂病の病的過程の表現であるとみなすことはできないということになつた。この見解は,こんにちでも変わりなく,大半の組織病理学者によつて支持されている。
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