第6回精神医学懇話会 精神医学における人間学の方法
指定討論
佐治 守夫
1
1東京大学教育学部
pp.21-22
発行日 1968年1月15日
Published Date 1968/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201281
- 有料閲覧
- 文献概要
笠原先生のお話ならびに読ませていただきました論文,いろいろ示唆に富むもので興味深いものでした。私としましては,先生の呈示された,“方法的検討”の項に関連して問題(というよりも)私見を呈示させていただきたい。私の立つ立場は,これを強いて名づけるとすれば,実験的現象学,あるいは,対人的現象学Interpersonal phenomenologyとでもいうものであろうと思います。これは“解釈学的現象学”に対する,実証科学的なあゆみよりをめざして意識的に名づけた名称であると受け取つていただいてもよいと思います。
笠原先生はつぎのように述べられました。“精神病者に対してどのような関与を行なうにしても,一種の関与を行なうにさきだつて,すでにつねに,関与せんとする精神疾患者についてなにがしかの知をもつている。……しかし「それ」は論理的に実現しにくい性質のものであり,事実「それ」を明らかにしなくても,身体的検索はもとより,精神病理学や治療行為でさえも可能である。……しかし「それ」は精神病理学や身体的検索によつて少しでも明らかにされる事態でもなく,むしろ逆に,……中略……「それは」いわゆる精神医学的研究分野の成立にさきだつて,すでてそれを可能にしている地平であるとすれば,人間学こそこの不分明にして非主題的な領分にとりくみ,その構造をことさらに主題化すべく努力することを求められている科学であるといえよう」
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.