回顧と経験 わが歩みし精神医学の道・3
精神医学を選ぶまで
内村 祐之
1,2
1東京大学
2日本学士員
pp.780-785
発行日 1966年9月15日
Published Date 1966/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201070
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前回までに私は,若い精神科医としての私に大きな影響を与えた,3人の著名な精神医学者について語つたが,その後,今日に至るまで,直接に,否,多くはむしろその業績を通して,影響を受けた人の数は少なくない。しかし,それを語る前に,まず私自身について少しく述べておくのが順序かと思う。
「何ゆえに,専門として精神医学を選んだか」という質問は,一時代前の精神科医が,必ず一度は受けたものであろう。これは,精神病者を低格視し,精神医学の無力をさげすみ,ことに当時多かつた,「お医者さん」らしからぬ超俗的な精神科医を見て,一般人が感じる好奇心ゆえの質問であつたが,私の場合は,ことにその度が強かつた。学生界の「名物男」として鳴らした内村が,何を好んで,「風変わり者」の行く精神科を選んだのか。どの科を志望しても,喜んで受け入れてもらえるだろうに,選りに選つて精神科へ行くとは——というのが,多くの人の頭に浮かんだ疑問であつたらしい。
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