癒しの環境
患者が選ぶアートの基準
林 容子
1
1アートウッズ
pp.435
発行日 2000年5月1日
Published Date 2000/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903004
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病気の床に臥せている患者は自分の病室のためのアートをどのような基準で選ぶだろうか? アメリカで250以上の病院のアートプロジェクトを手がけたASTHETIC社の調査によると,ほとんどの患者は自らの病気を癒すことに役立つアートを求めるとのことである.アートに実際に病気を治す力があればそれに越したことはないが,「病は気から」といわれているくらいであるから,鑑賞することによって病気が治るような気がするものもこれに含まれよう.例えば,薬草をモチーフにして,それぞれに薬草の効用を書き込んだ作品や,今流行りのいわゆるヒーリングやリラックス効果をもたらすものをモチーフにしたもの,あるいは,宗教の逸話で病が癒される話を描いたものもこれに含まれる.
一般に自然を描いた作品が患者によい影響を及ぼすといわれる.99歳で亡くなった祖父は,生前入院したとき自分の病室に母の撮ったニッコウキスゲの写った山の写真を掛けていた.退院するときに,「この個室にはこの写真が必要です」といい,躊躇する母を説得して無理やり病室に置いてこさせたほどだった.
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