紹介
—Petrilowitsch 著—Abnorme Persönlichkeiten
木村 敏
1
1京都大学医学部精神医学教室
1Aus der Psychiatrischen und Nervenklinik der Universitat Kyoto
pp.80-85
発行日 1966年1月15日
Published Date 1966/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200957
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精神病質者あるいは異常人格者をめぐつての問題は,古く,しかもつねに新しい問題である。そして従来から多くの学者がいろいろの角度から——精神病とは一応独立した,先天的あるいは後天的な性格偏倚として,あるいは特定の精神病の病前性格というかたちにおいて——この問題に対する見解を述べてきた。ここに紹介するPetrilowitschの著書は,KruegerおよびWellekによつて代表される,いわゆる「全体性心理学」あるいは「構造心理学」の立場に立つて書かれた唯一の異常人格論であるという意味において,この分野においては無視しえない文献の一つといえるだろう。なお,著者の根本的な立脚点である「構造心理学」の諸概念については,わが国には残念ながら適当な参考書がない。同じ著者の“Beiträge zu einer Strukturpsychopathologie”(Karger,Basel/New York 1958)などを参照していただきたい。
序論において著者は,「精神病質」Psychopathieという概念が今日あまりにも一般的に使用されており,かつそこに誤つた価値概念が混入してしまつているから,自分はこの概念を放棄して「異常人格」abnorme Persönlichkeitenという表現を用いると述べたあと,本書においては決して新しい体系が試みられているのではなく,K. Schneiderの「精神病質人格」の体系が全体としてはそのまま踏襲されているが,部分的には多少の見解の相異や分類の変更があることを断つている。
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