紹介
—Aristoteles(?)著—Problemata 抄
大橋 博司
1
Hiroshi Ohashi
1
1京都大学精神科
1Dept. Psychiat., School of Med., Kyoto Univ.
pp.945-948
発行日 1964年12月15日
Published Date 1964/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200778
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Aristotelesの著作のなかから心理学的,精神病理学的記載を求めるならばDe Anima,Parva NaturaliaあるいはNicomachean Ethicsのある部分などがあげられようが,今回はProblemataのなかのMelancholiaの記載を紹介する。ただしProblemata(問題集(はアリストテレス全集には含まれているものの,かれ自身の筆によるものでないことは諸家の認めるところである。38巻からなる「問題集」はこの大哲学者を祖とするペリパトス学派の所産であり,編纂をかさねられて現在のかたちをとつたのはおそらくAD 5世紀ごろであろうという(Hett)。本書にはじつにさまざまの問題が論ぜられているが,とくに医学的,生理学的主題も少なくない。通読してみると鋭利な洞察がある反面,幼稚と思われる議論もあつて一様でないが,それにしても古代ギリシャ人の好奇心,求知心,質問癖にはあらためて感じ入らざるをえない。
ここに訳した部分はProblemata XXX, 1でメランコリアについて論じており,CiceroやPlutarch以来,よく引用されるところである。Ciceroの言を信ずるとすれば(Tuscul. Disput. I, 33)**,少なくともこの部分はAristoteles自身の意見であるかもしれない。本文の冒頭にある「天才とメランコリア(または狂気)」の主題は以後二千年来,諸家の好んで論ずるところとなつている。
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