らいぶらりい
—角倉一朗著—バッハ
杉浦 衛
pp.46-47
発行日 1966年4月1日
Published Date 1966/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203172
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「G線上のアリア」で有名なバッハについてのすぐれた本を紹介しましょう.J・S・バッハは,今から281年前の3月21日頃,アイゼナッハという田舎町で生まれた.(確かな日は解っていない)「その後ながくバッハー族の地となったテューリンゲン地方は,ハルツ山脈とテューリンゲンの森に囲まれた美しい風光と肥沃な大地に恵まれ,ヴィーナスとタンホイザーの物語をはじめ,数々の伝説にも富んでいる.マルティン・ルッターが聖書の画期的な翻訳をしたヴァルトブルクの城や,彼が学生時代を送ったアイゼナッハとエルフルトの町もこの地方のものでルッター派信仰の中心地をも成していた.」そしてなによりもこの地方は昔からのドイツの音楽(民謡その他の民族音楽)の中心地であった.
さて,この本の興味深いすぐれている点を挙げてみると,それは,バッハの音楽と信仰との関係を深く研究されている点です.1717年,32歳のバッハは,ヴァイマールの領主ヴィルヘルム・エルンストに辞職願いをさし出した.給料がよくて,音楽がもっと自由に勉強できるケーテンの宮廷に就職したかったからだ.怒った領主は彼を牢に拘禁してしまった.この牢の中で不滅の作品オルガン小曲集BWV.(599-644)の一部は,この入牢中に生まれたのであろうといわれている.
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