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Ⅰ.はしがき
精神科領域においては,近年,向精神剤がつぎつぎに作り出され,それにともなつて治療効果に関して多くの研究が発表されている。しかし実際に詳しく検討してみると,幾百とある文献数にもかかわらず,信頼でき有用であると考えられる文献は数分の一であると称されている。これはその施行の方法や評価のしかたに,科学的な客観性を欠いているためである。このように研究の計画や評価の基準がまちまちであるため,それぞれの著者のえた成果を比較しようとしてもそれぞれの研究はそれぞれの基準によつており,その結果として他の発表と比較し対照するにあたつて大きな困難をきたしているというのが現状であるといえると思う。これらの問題を解消するには,理論的に考えられた一定の方法にしたがうこと,共通の評価の尺度が適用されることが必要であろう。このことについては,わが国においても問題であるばかりではなく,アメリカなどでもそうであるようであり,効果判定を普遍性のある有意義なものとするために,いろいろの提案がなされている。そこでわれわれは最近公けにされた著,
1)Evaluation of Changes Associated with Psychiatric Treatment. Marvin Reznikoff, M. A., Ph. D. & Laura C. Toomey, M. A. Charles CThomas. Pub. Springfield. Illinois. U. S. A, 1959.
2)Differential Treatment and Prognosis inSchizophrenia. Robert D. Wirt, Ph. D. & WernerSimon, M. D. Charles C Thomas. Publisher. Sprngfield. Illinois. U. S. A. 1959.
の骨子を主として紹介しつつわれわれの教室で検討しつつある薬物効果の判定についての考えをものべて参考に資したいと思う。
ある薬物の効果についての研究には,その研究のための計画立案の原則,すなわちいかなる立場にたつているか,いかなる点に意義を認めているかなどの理論的な問題と,それに則つて行なう実施の方法,判定の基準,判定のまとめなどの実際的問題とが重要な事柄となるであろう。
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