思いつくまま
臨床効果の判定
西浦 常雄
1
Tsuneo Nishiura
1
1岐阜大学医学部泌尿器科
pp.84
発行日 1969年1月20日
Published Date 1969/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200609
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サルファ剤やPenicillinなどの出現した時には,その効果が余りにも劇的であつたために敢てその臨床治験を疑う人はいなかつた。しかし最近の新薬には,その臨床効果に関して判断に迷うことが少なくない。正直にいつて,治験を行なう医師がその新薬に愛情を有しているか否かでその評価が幾分変動する可能性すらある。現在ではKanamycinの効力を疑う人は1人もいないが,発見当時の臨床試験の際には随分と蔭口をたたかれたものである。
薬剤の臨床効果は,Placeboや他剤との比較をdoubleblind法を用いて推計学的に評価されるべきであるが,一般には診療の余暇に治験を行なつている関係上,あるいは急性疾患にPlaceboを投与することの不安などのために,多くは唯々何となくa例に使用してb例に有効,有効率b/a%という成績が出されることになる。このような方法でも多数例を集めて詳細に検討すれば大体の傾向はつかめるものではあるが,多くは投与量,投与期間,観察方法などすらまちまちである。一方尿路感染症に対する化学療法剤の治験は,対象となつた症例の構成如何によつてその成績が全く変化するという特殊性がある。従つて私は原則として"有効率何%"という表現を用いないことにしていたが,それでも勝手に有効率を計算されて引用されたことがある。
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