研究と報告
精神病院における結核管理—結核病棟管理を中心に
蜂矢 英彦
1
,
石井 毅
1
1都立松沢病院
pp.697-702
発行日 1961年8月15日
Published Date 1961/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200363
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まえがき
結核は,予防施策の発達によつてかなり予防しやすくなり,化学療法の進歩と普及によつて,なおりうる疾患となつた。結核死亡はいまや死因の第7位に落ち,結核はもはや問題ではないといわれる。精神病院入院患者中の結核も,多少ずつは減少していると思われ,われわれもまた結核は問題でないと考えがちであつた。しかし,現実は必ずしも楽観を許さない。精神病院の結核患者は,ともすれば忘れられがちであるし,少なくともわれわれ精神科医の治療的あるいは研究的熱意が,まず第1にこれらの結核患者にそそがれるというようなことはありそうもない。こうして彼ら精神病院の結核患者は,最初から二重の不幸を背負つているのである。
松沢病院では,昭和32年の全入院患者に対する間接撮影実施を中心として,遅まきながら結核管理に本腰を入れ始めた。そして,われわれ結核病棟担任医も,このころから結核病棟管理に熱意をそそぎ,いささかの成果をあげることができた。とはいえ,われわれの行なつたことは,現代の精神病院が当然行なうべき最低のものであつたにすぎず,われわれとしてもこれを公表する意志は毛頭なかつた。しかし,朝日新聞昭和35年12月27日夕刊所載の北錬平氏の「結核をみなおせ」を読むにおよんで,われわれの考えも変わつた。
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