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序
私がここでこのテストを紹介したく思つたのは,言語表現を用いての臨床的に有効な人格診断テストはRorschach, T. A. T. を初めとし,割合に知られているが,言語表現によらない動作テストは従来あまり紹介されていないからである。人物描画テストはすでに紹介ずみであるが,人物の描画というものは,書かれている対象が被験者自身のprojectionなのか,あるいは被験者に意味のある重要な人のimageなのか,あるいはその場に偶然居あわせた人の描写なのかはつぎりしない。したがつて人格テストとしてはある規定性が乏しい。(テストというものは漠然としているほど,よいともいえない)。同じように,ここに紹介するテストの前身ともいえるM. Lowenfeldのモザイクテストがあるが,これは色彩が限定され,色彩の小片の形態は規定されているが,被験者が自由に形造りうる自由度が広すぎるきらいがある。この自由さをやや狭めたものには7Q-testがある2)。しかしこの場合は白-黒の対照のみ強調し"かげ絵"的な効果-したがつて空間位置の対照-はよいが,色彩にもられる感情表出がつかめない。薬物実験においても,興奮をよびおこすような薬物の投与下では,赤黄橙が好まれるし3),不安状態におかれている病人では,緑が増したりする。このようなことは,たとえ色彩のもつ心理学的意味がまだ十分解明されていないとはいえ,色彩はある感情を表示しうるものであり4),ひいては人格を反映するものと考えることができるであろう。それゆえ私は「色彩と構造」を主題とする人格テストとして,M. Pfisterが色彩ピラミッドテストを創始し,その後継者らが統計的に,臨床的に研究を進めていることに興味を感じ,臨床において,短時間に簡単に施行しうる動作テストとして,かつわれわれが日常テスト施行にさいし,もつとも困難を感じる言語テスト『拒否』を補いうる有効なテストとしてここに紹介をこころみるものである。
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