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編集後記
T. A.
pp.650
発行日 2014年7月15日
Published Date 2014/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102773
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今月号も多岐にわたる精神医学・医療の研究論文がバランス良く並んだ。今月号では特に私自身が査読させていただいた論文がいくつもあった。なんだか懐かしく印刷された文章を読みつつ,初稿を思い出して「かなり腕を上げられましたね」という思いも抱いた。査読と改訂の行き来の中では,査読者が元気ならぬ新知識や新たな着想法をもらっているという気持ちになる。
ところで大学病院精神科に勤務するとその所在地県の地域精神医療に関してさまざまな活動に参加することになる。医療はともかく福祉,保健という必ずしも得意ではない事柄にも関与するが,なんとなく馴染まない感じがして,このことがいつも不全感になっていた。それだけに本誌の巻頭言を面白く拝読させていただいた。福田祐典先生のこの記述は,医療者として,行政官として,そして研究所の責任者として多眼的な視座から今後の精神医療の課題についてどう臨むかについての意思表示である。キーワードは,「多機能垂直統合型」であり「適切な医療を提供できるビジネスモデル」である。そしてテイクホームメッセージは,「同一の法人が地域に責任を持つ」にある。その理念と具体的戦略にバランスの優れたお考えが読み取れる。これを拝読して私の不全感の一原因が,「政策医療」という発想の乏しさに起因するのではないかと思った。今後の卒前と卒後教育において心すべき点だろう。
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