--------------------
編集後記
T. A.
pp.1172
発行日 2012年11月15日
Published Date 2012/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102329
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今月号の特集では,アルコール・薬物関連障害という古くて新しい問題が扱われた。多くの精神科医師がこ問題の深刻さや治療の難しさを漠然と知ってはいても,あるいは知っているからこそ積極的に関わろうとはしない。というのは,この問題の本質的な難しさは,急性期のいわば解毒療法にあるのではなく,「またやってしまった」,「使わないではいられない」という依存の病理にあるからだ。そしてこれに対する治療の試みは,実に虚しい結果に終わりがちである。
けれどもそのような厳しい医療に挑戦し努力し続けてきた医師もいる。このような医師たちが,時代の変遷の中で新たな直面している課題の実態を報告するとともに,その対応法を提示されたところに本特集の新しさがある。日常このような患者さんには接することが少ない私にとっても,脱法ドラッグ・向精神薬,アルコール・薬物問題を抱えた医療観察法病棟の統合失調症患者,パーソナリティ障害とアルコール・薬物乱用などのテーマはどれも興味深い。また災害とアルコール問題は,旬の話題であるだけでなく,今後の大型自然災害に備えて精読する価値が大いにある。このような状況において,新たな治療プログラムができているのを知って,大いに心強い思いになれた。さらに飲酒運転,自殺とアルコール問題の関係を振り返ると「アルコール健康障害対策基本法」の制定という考えが出てくるのももっともである。このように本特集では現代社会のアルコール・薬物関連問題がコンパクトに整理されている。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.