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私のカルテから
Quetiapineへの切り替え後に社会機能の改善がみられた慢性期統合失調症の2例―精神障害者社会生活評価尺度(Life Assessment Scale for the Mentally Ill;LASMI)を用いて
Two Cases of Chronic Schizophrenia: Social ability improved after switching from polypharmacy to quetiapine: evaluation by using the Life Assessment Scale for the Mentally Ill; LASMI
河邉 憲太郎
1,3
,
栗林 達也
2
,
福原 竜治
3
,
細田 能希
1
,
上野 修一
3
Kentaro KAWABE
1,3
,
Tatsuya KURIBAYASHI
2
,
Ryuji FUKUHARA
3
,
Yoshiki HOSODA
1
,
Shu-ichi UENO
3
1医療法人佑心会堀江病院
2医療法人佑心会堀江病院看護部
3愛媛大学大学院医学系研究科脳・神経病態制御医学講座脳とこころの医学
1Horie Hospital, Matsuyama, Japan
2Department of Nursing, Horie Hospital
3Department of Neuropsychiatry, Neuroscience, Ehime University Graduate School of Medicine
pp.847-852
発行日 2012年8月15日
Published Date 2012/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102249
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はじめに
統合失調症は,発病前期・前駆期・進行期・安定期の経過をたどる10)が,安定期では疾病水準が固定化し,抗精神病薬による治療効果は限局的である6)とされる。一方,近年,非定型抗精神病薬が用いられるようになり,統合失調症の寛解(remission)が可能になるに従い,単に疾患からの回復(recovery)を目指すだけでなく,社会復帰が指向されるようになりつつある3)。すなわち,陽性症状の改善に加え,陰性症状・認知機能障害などが関与する社会機能やquality of life(QOL)の改善を目指すことが重要視されるようになった。提示する慢性期統合失調症2症例は,幻覚や妄想などの陽性症状が表出されず内在する一方で,疎通性の不良などのコミュニケーション障害が目立つため,隔離室を中心とした入院治療が必要であったが,抗精神病薬を整理し,quetiapineを中心とした薬物療法に変更したところ,疎通性の改善や活動性の向上を認め,退院までには至らないものの,最終的に行動制限の改善が可能となった。今回,精神症状の評価に簡易精神症状評価尺度(Brief Psychiatric Rating Scale;BPRS)日本語版8)(各項目別スコア,合計スコア,クラスター別スコア2))に加え,日常生活・社会生活の評価として精神障害者社会生活評価尺度(Life Assessment Scale for the Mentally Ill;LASMI)4)を用い評価した。なお,症例報告に関しては家族の同意を得て,個人情報保護の観点から,本質に支障のない程度に症例の内容を変更している。
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