巻頭言
希望とリカバリー―精神科医療におけるその役割
安西 信雄
1
1独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院
pp.4-5
発行日 2012年1月15日
Published Date 2012/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102068
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年が明けた。今年こそ希望が持てる年になって欲しい。とりわけ昨年3月11日の東日本大震災で被災された方々,さまざまな困難な中で復興に向けて努力されている方々には,明るい希望の見える年になって欲しい。また,精神障害を持つ人たちやそのご家族・関係者の方々にとって,さらに,震災や放射能という国難の渦中にある日本の国民全体にとっても,今年が希望の年になって欲しい。これはみんなの願いである。
ところで「希望」は日常的に使われる言葉であるが,「希望とは何か」「希望が持てる」というのはどういうことか,改めて問い直すと答えるのが難しい。周知のように,このテーマに正面から取り組んでいる研究グループがある。東京大学社会科学研究所(略称「東大社研」)で2005年から「希望学」として続けられている研究である。これは釜石市とそこで働き生活する人々を対象とした詳細な研究であるが,研究対象として釜石市が選ばれた理由は,2度の大津波と戦災から立ち直り,製鉄の町として繁栄したこと。その後も高炉が休止され産業構造の転換と高齢化に直面したが,「ものづくり」の原点を大事にした取り組みの中で挫折から立ち直ってきたこととされている。3月11日の震災と津波に対しても,たくましい復活を願わざるをえない。
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