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はじめに
わが国における性同一性障害の治療は,1995年に埼玉医科大学で「性転換治療の臨床的研究」が倫理委員会へ申請されたことから新しい展開が始まった。その後1997年に日本精神神経学会が「性同一性障害に関する診断と治療ガイドライン」を発表,1998年に初めて公の性転換手術が行われたことにより広く知られるようになった。アメリカ精神神経学会は診断基準としてDSM-Ⅳ(1994年)を,世界保健機関(World Health Organization,WHO)はICD-10(International Classification of Diseases)(1992年)を公表しており,世界中で使用されている。また,日本精神神経学会のガイドラインが参考にしたのは,ハリー・ベンジャミン国際性別違和協会〔Harry Benjamin International Gender Dysphoria Association,HBIGDA,現在はトランスジェンダーの健康のための世界専門家協会(World Professional Association for Transgender Health,WPATH)と名称変更〕の標準治療(Standards of Care)である(http://www.wpath.org/publications_standards.cfm)。
このように,性同一性障害の診断や治療は欧米のものに基づいて行われてきた。欧米においては19世紀中頃から性同一性障害の報告がみられるようになり,その後,膨大な知見を積み重ねている。現在では,世界各国から性同一性障害に関して,臨床的な研究をはじめ,生物学的な立場から,また社会学や政治的な立場などから,さまざまな研究が報告されるようになっている。このような状況の中で,アメリカ精神神経学会は2013年のDSM-5への改訂に際し,診断名の中から障害(disorder)という言葉を取り除くことを提案している。
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