特集 性同一性障害とインターセックス—その人が納得の性を生きるための支援
性同一性障害は“障害”か
岡部 恵子
1
1滋賀医科大学医学部看護学科
pp.106-110
発行日 2000年2月25日
Published Date 2000/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902341
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性同一性障害は看護の対象である
「性同一性障害は障害か」。これが今回,私に与えられたテーマである。このことについて,真剣に考えざるを得なかったのは,一昨年の春のことであった。学生のひとりが,どうしても性同一性障害について卒業研究に取り組みたいと申し出てきたのである。
性同一性障害が母性看護学の研究になるのかと,まず私は悩んだ。いや,母性看護学の研究としての以前に最も悩んだのは,性同一性障害についてどのように対処することが看護なのか,果たして性同一性障害について考えることが看護研究としての卒業研究に相応しいテーマとなり得るのか,ということであった。学生は,「看護研究にならなくてもいい。自分はどうしてもこの問題を解決したいのだ」と主張し続けた。そうした学生の真剣さは,友人の幸せを願うがゆえの強い思いであり,性同一性障害であるがゆえに悩む友人の思いを少しでも理解したいということだったのである。こうした学生の研究取り組みの熱望につきあった私は,学生をとおして,ひとりの性同一性障害に悩む方の姿を見ることができた。そして,この悩む方に幸せになってほしいと強く願う彼女の思いは,看護そのものに違いないと確信した。そして私も教員として,ともに性同一性障害の問題に取り組もうと決心した。
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