連載 性のヘルスプロモーション・8
[インタビュー]性同一性障害
中村 美亜
,
岩室 紳也
1
1地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター
pp.477-482
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100590
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
性同一性障害とは
岩室 私と中村美亜さんの出会いは,偶然,かつタイムリーでした.ちょうど私が性同一性障害の相談を受け,個人的な疑問として「性同一性障害の診断が正しくされない方もいらっしゃるのではないか.人によってはこの診断を言い訳にしていないだろうか」ということが引っかかっていた頃,昨年12月の熊本でのエイズ学会で,「ぷれいす東京」の方々の懇親会に合流してそこにたまたま中村さんがいらっしゃった.そこで「中村さんはこの私の疑問に関してどうお考えですか」と.
中村 最近,性同一性障害が認められ,多くの人たちが知るようになったのはとてもいいことだと思うのですが,その反面,すべて「性同一性障害」という言葉で片付けてしまえば事が済んでしまうかのような誤解が増えています.自分の性別に対する違和感,男だけど女の格好をしたい,女らしいほうが好きだとか,あるいは逆の場合などがあると,すぐに性同一性障害かそうじゃないかという短絡的な思考で,医師のところに行って診断してもらおうとする.診断してもらい,そして診断に沿って進んでいけばいいという風潮はちょっと誤りだなと私も感じています.どれだけ優秀な先生でも,客観的に診断することは非常に困難なのです.検査をしてわかるという問題ではなく,本人から話を聞いて,判断していくしかない.究極的には,自分の性別違和感が非常に強くなったために,社会生活を送る上で様々な支障に遭遇するようになり,そのため精神的に障害が生じた時に初めて,「性同一性障害」ということになるのであり,それは,自分でしかわからないんだと思います.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.