Japanese
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特集 性同一性障害(GID)
性同一性障害に対する精神療法の課題とその問題点
The Tasks and Problems in the Psychotherapy for Gender Identity Disorder
松永 千秋
1
Chiaki MATSUNAGA
1
1正和会日野病院
1Hino Hospital, Yokohama, Japan
キーワード:
Gender identity disorder
,
Psychotherapy
,
Narrative
Keyword:
Gender identity disorder
,
Psychotherapy
,
Narrative
pp.763-768
発行日 2011年8月15日
Published Date 2011/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101944
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はじめに
現在,性同一性障害に対する精神療法は,主に2つの意味で理解されていると考えられる。1つは,「性同一性障害に対する精神療法はほとんど無効である」といわれる時の精神療法で,ここで言及されているのは「異性化願望」をなくすことを目的とした精神療法である3)。もう1つは,「性同一性障害は心の性別と身体の性別が一致しないために苦悩している状態であり,有効な治療法は身体の性別を心の性別に近づけることである」という,現在行われている概念化に基づくもので,そこでの精神療法は身体治療の精神的サポートとしての精神療法である3)。しかし,このような従来の精神療法の治療方針や性同一性障害の概念化は本当に当事者の実態に沿ったものなのだろうか。筆者は,性同一性障害の専門外来において,これまでに約200名の性別違和感を抱える当事者の診療を行ってきた。そして,その経験に基づいて現在の性同一性障害の概念や治療のあり方を再検討し,これまでのものとは異なった新しい治療論を提案している10)。本稿ではそれを踏まえ,筆者の考える性同一性障害に対する精神療法の課題と問題点について論じる。
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