Japanese
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特集 若年性認知症をめぐる諸問題
若年性認知症者の運転免許の問題
Driving and Early-onset Dementias
池田 学
1
Manabu IKEDA
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部脳機能病態学分野(神経精神科)
1Department of Psychiatry and Neuropathobiology, Faculty of Medical and Pharmaceutical Sciences, Kumamoto University, Kumamoto, Japan
キーワード:
Driving
,
Early-onset dementias
,
Alzheimer's disease
,
Fronto-temporal lobar degeneration
,
Accidents
Keyword:
Driving
,
Early-onset dementias
,
Alzheimer's disease
,
Fronto-temporal lobar degeneration
,
Accidents
pp.961-966
発行日 2009年10月15日
Published Date 2009/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101503
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認知症の自動車運転とわが国における対策
わが国の65歳以上の免許保有者はすでに1,000万人を超え,認知症患者の自動車運転免許保有数は,免許保有者数と認知症の有病率から,30万人近く存在すると考えられている。自動車の運転には,記憶,視空間認知,交通法規などの知識,判断力,注意能力などの多くの認知機能が必要となり,これらの認知機能に広範な障害を有する認知症患者は,事故を生じるリスクが高くなると考えられる。実際,認知症患者の23~47%がその経過中,1回以上の自動車事故を経験していること,また認知症患者は同年齢の健常者に比し,2.5~4.7倍自動車事故を起こすリスクが高いことが報告されている3)。さらに,1度事故を起こし,その後運転を継続していた認知症患者の40%が,再び事故を起こしていることも報告されており,認知症は患者の自動車運転能力に影響を及ぼし,事故を生じるリスクを高めることは間違いない。
わが国で認知症患者の自動車運転が制限されるようになったのは比較的最近で,2002年6月に改正道路交通法が施行され,認知症患者は公安委員会から運転免許を停止または取り消され得る可能性があると定められた。しかしその後も,この改正法は実際にはほとんど機能せず1),臨床現場では家族や主治医が,患者の人権と社会の安全の間で苦悩することがしばしばあった。その理由は,本法には,誰がどのような手続きで運転が危険かどうかを判断し,どのような手順で運転中止を決定するかなどの点が十分盛り込まれていなかったことにある。
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