書評
―土居健郎 著―臨床精神医学の方法
衣笠 隆幸
1
1広島市精神保健福祉センター
pp.817
発行日 2009年8月15日
Published Date 2009/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101478
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土居先生は,精神分析と精神医学の大先輩であり大家である。私が精神科に入局した頃から,先生のご著書「精神分析と精神病理」,「甘えの構造」などを一所懸命読んで,最終的に私自身も精神分析家になる道を選んだのである。今回編集部より土居先生のこの著書の批評の依頼があった時には,大変名誉なことだと感じ,他方では自分には荷が重すぎるのではないかとずいぶん躊躇した。実は土居先生が,私たちが主催している日本精神分析的精神医学会の第三回大会(2005年)の特別講演をお引き受けくださったことがあった。そして,その講演を基調にした論文が本著書の第11章に掲載されていることを知って,この書評をお引き受けしないといけないと思うようになった。その時の先生のご講演は,大変感銘を受けるものであった。そこには先生が常日頃主張してこられた,臨床体験を真摯に正直に見ていくことの重要さを実践されている姿があった。
この著書は比較的小冊であるが,その中に書かれているものは,土居先生の長年考えてこられたものを基にした大変含蓄のあるものである。ここで取り上げられている主題は,先生が「序」の中で述べておられるように,臨床精神医学における精神分析の実践の本質的問題である。日常語と専門語と精神医学(第3章),臨床精神医学の方法論(第12章)など精神科臨床に関する原則的な主題に関しては,私たちの専門家としての根源的な視点を問われるものである。
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