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はじめに
裁判員制度とは,一定の刑事裁判において,国民から事件ごとに選ばれた裁判員が裁判官とともに審理に参加する制度である。司法制度改革の一環として,2004年5月21日「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(以下,「裁判員法」あるいは単に「法」と略記する)が成立し,2009年5月21日から施行され,実際の裁判員裁判が開始された。本稿の掲載される2011年10月には施行後約2年半が経過することになる。
裁判員制度については,施行開始前から現在に至るまで制度そのものの是非のような根源的なレベルの問題についても批判が存在している。しかし,最高裁判所の行った調査やマスメディアの報道などによれば,特に裁判員経験者を中心に,よい経験になったという意見も多い。一般国民から縁遠い存在となっていた刑事裁判を,身近な存在に変え,司法に対する国民の理解の増進を図るという目的は,ある程度は達成されているように思われる。
最高裁判所の統計(速報値)8)によれば,裁判員制度が開始された2009年5月から2011年3月31日の間に裁判員裁判の対象となる事件で起訴された人員は3,377人であり,罪名としては強盗致傷847人,殺人701人,現住建造物等放火311人,覚せい剤取締法違反281人などであった。調査時点で終局していた人員は2,099人で,有罪2,053人,有罪・一部無罪2人,無罪5人,その他(公訴棄却・移送)39人と圧倒的に有罪が多かった。無罪となった5人の罪名は殺人1人,覚せい剤取締法違反3人,強盗致死(強盗殺人)1人であった。
マスメディアの報道をみても,制度開始直後は,裁判員裁判の事件ということだけで地方の比較的小さな事件でも全国的に報道されていたが,最近では,全国的に報道される事件は,世間の耳目を集めるような重大な事件や無罪判決がでた事例など判決結果が特に注目される事件に限られている。こうした状況をみても,裁判員裁判が行われること自体は,もはや珍しいことではなくなっており,制度自体は定着していると考えられる。
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