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はじめに
わが国においては,1998年に年間の自殺者数が3万人を超えてから2007年まで10年連続して3万人以上が続いており,座視できない状況にある。厚生労働省(以下,厚労省)および国はうつ病・自殺対策として表1のような施策を行ってきた。
「自殺対策基本法」の成立を受けて厚労省は,2007年度11.61億円を,2008年度15.52億円を自殺対策の推進費用として予算化し,「うつ病の早期発見・治療の推進のため,うつ病などについての普及啓発活動を実施するとともに,相談・治療体制の整備を推進するため,かかりつけ医や心理職などを対象とした専門的な研修を実施する。また,うつ病の病態解明や診断・治療法,うつ病患者の社会復帰のためのプログラムなどに関する研究開発を推進する」などの施策を講じている。こうした施策の背景には,自殺企図者の75%に精神障害があり,その約半数がうつ病などで,うつ病患者は急増しているが,4人に3人は医療機関で治療を受けていないといった現状認識がある(図1)。これに呼応して,日本医師会(以下,日医)も一般科医師のうつ病に対する診療能力向上のための研修会を2007年度より都道府県医師会単位で開催するようになり,所要の講習会修了者には,2008年4月の診療報酬改定で,うつ病診療へのインセンティブが与えられることとなった。
本シンポジウムは,精神科七者懇談会(日本精神神経学会,精神医学講座担当者会議,日本精神科病院協会,日本総合病院精神医学会,独立法人国立精神医療施設長協議会,全国自治体病院協議会,日本精神神経科診療所協会,以下,七者懇)として取り組むべきうつ病・自殺対策につき,①医師臨床研修における研修医のうつ病診療能力向上,②安全衛生法のメンタルヘルス対策における産業医のうつ病診療能力向上,③生涯研修としての一般科医のうつ病診療能力向上,などについてそれぞれの立場から論じることとしたい。この稿では,問題提起として現状を概観し,問題点を抽出したい。
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