Japanese
English
特集 アルコール・薬物関連障害
アルコール健康障害対策基本法(仮称)の制定を目指して
To Establish Basic Act on Alcohol-related Health Disorders Measures (provisional name)
猪野 亜朗
1
,
長 徹二
2
Aro INO
1
,
Tetsuji CHO
2
1かすみがうらクリニック
2三重県立こころの医療センター
1Kasumigaura Clinic, Yokkaichi, Japan
2Mental Care Center, Prefecture of Mie
キーワード:
Alcohol dependence
,
Depression
,
SBIRT
,
screening, brief intervention, referral to treatment
,
Suicide
,
WHO
,
World Health Organization
Keyword:
Alcohol dependence
,
Depression
,
SBIRT
,
screening, brief intervention, referral to treatment
,
Suicide
,
WHO
,
World Health Organization
pp.1069-1077
発行日 2012年11月15日
Published Date 2012/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102309
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はじめに
2006年8月,福岡市職員による飲酒運転が3人の子どもの命を奪ったことをきっかけに,飲酒運転への厳罰化の動きが強まり,酒気帯び運転で検挙された公務員などの解雇が続いた。これに危機感を持ったアルコール関連の3学会は,飲酒運転対策プロジェクト2)を立ち上げて,海外を含めたエビデンスをまとめて,治療と教育の必要性を報告した。また近年,自殺の背景にアルコール問題が潜むことが多いことが明らかになり1),精神科医として日常診療で「アルコール」を見過ごすことが許されなくなってきている。そのほかにも大学生の急性アルコール中毒死などさまざまな社会問題にアルコールは関連している。同様に身体疾患や精神疾患にもアルコールが大きく関連していることが分かってきた。
アルコールに関連する問題は生活・診療の中でありふれたものであるが,あまり焦点を当ててこられなかった経緯がある。だが,2010年英国薬物関連独立科学委員会が最も深刻な影響をもたらしている精神作用物質は,ニコチンでも覚せい剤でもなく,アルコールであることを明らかにした13)。今こそcommon diseaseとしてアルコール関連問題を振り返り,その課題に向き合うべき時が来たと考える。
本稿では,アルコール健康障害対策基本法(2012年8月30日時点での仮称:以下基本法)の制定につながる流れや基本法の概略を説明し,精神科医療の現場にどのように影響するかを述べる。
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