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はじめに
「入院医療中心から地域生活中心へ」という本邦の精神保健福祉施策の移行に伴い,居住先の確保というハード面の問題に加え,地域生活上の対人的支援を中心としたソフト面の体制整備も大きな課題となっている。直接地域に出向いての生活支援活動としては,ACT(assertive community treatment),訪問看護,地域活動支援センターなど対象者との個別契約に基づく活動,および保健所,市町村保健センターなどによる行政サービスとしての精神保健活動などが挙げられよう。これらのうち,行政による精神保健活動は,主に地域住民からの相談を受けて活動を行うもので,本人との契約関係を必ずしも必要としないため,未治療者や治療中断者のような現在医療機関がかかわりのない事例にも比較的対応しやすいという特徴がある。
一般に,精神保健活動は市町村,保健所単位でその管轄地域ごとに実施されるが,群馬県ではこれらに加えて,行政機関である群馬県こころの健康センター(精神保健福祉センター)内に設置された精神科救急情報センターの精神科医師・保健師のチームが県内全域を対象として,地域保健所と連携し,地域で問題となる対象者への危機介入を主として,その問題解決のため訪問や事例検討会などの精神保健活動(以下,アウトリーチ活動)を積極的に開始した1,2)。このような行政機関による,全県を対象とした精神科医師・保健師のチームによる危機介入的な地域活動は,全国的にも珍しいものと考えられる。今回この精神科救急情報センターによるアウトリーチ活動のうち,対象者に直接かかわる訪問活動を中心に報告する。同時に,訪問事例の特徴を分析し,その転帰などを検討することで,地域で問題となる事例の特性,およびアウトリーチ活動の効果が明らかになるものと考え,アウトリーチ活動による訪問事例の検討も行った。その結果も併せて考察する。
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