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はじめに
1998年,わが国の年間自殺者数は3万人を超え,以降,減少の兆しはなく,現在まで年間自殺者数が3万人台という深刻な事態が10年間続いている。
自殺者の背景には,その何倍もの数の自殺未遂者が存在するといわれている。自殺未遂の既往は自殺の最も強力な危険因子の1つであり6),自殺未遂者に対して再企図防止のための介入が必要とされている。わが国で2007年に自殺総合対策大綱が内閣府より発表され,国としての基本施策が示されたが,この中でも未遂者対策が明確に掲げられている。
身体的に重症な自殺未遂者は救命救急センターに入院することが多い。救命救急センターに入院する患者全体のうち,自殺未遂者が10%前後を占めるとの報告もある2)。自殺未遂者は,高率に精神科疾患を合併しているため7),救命救急センターに入院する自殺未遂患者は身体・精神症状の重症度がともに高く,在院期間が長期化しやすい。救命救急センターにおける自殺未遂者の在院期間を調べた研究は筆者の知る限りほとんどないが,身体合併症を有する精神科患者では在院期間が長期化するという先行研究がある4)。
一般に,救命救急センターには,専任の精神科医や精神保健福祉士,心理士が勤務していることはまれであり,精神疾患を合併した自殺未遂者への心理面接(危機介入),診断,治療,ケース・マネジメントなどを迅速に実施することが難しく,そのことも入院期間の長期化の要因の1つとなっている可能性が考えられる。
筆者らの所属する横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センターでは,2005年から救命救急センターの常勤スタッフとして精神科医が配置され,自殺未遂者への対応を含めた精神科診療を担当している1)。本研究は,救命救急センターに精神科医が配属された前と後とで,自殺未遂患者の在院期間がどう変化したのかを調べる目的で行われた。
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