Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- サイト内被引用 Cited by
はじめに
危機介入については,その定義あるいはコンセプトをめぐってさまざまなものがある。代表的な精神科の辞書や事典を見てみると,Campbellの辞書1)では危機介入を,「発達過程や予期しないできごとに直面した際,個人や集団に対する簡便精神療法」とし,技法に限定して定義している。一方,精神医学事典の中で稲村5)は,「カプランの二次予防の一部をなすものといえるが,危機の具体的内容としては,自殺のほか,心理的パニック状態,家出,不安,抑うつ状態,精神錯乱,悲嘆反応,衝動行為,犯罪・非行,急性薬物・アルコール中毒である」と述べている。このように危機介入を技法として述べる立場のものから,具体的内容を幅広くとり,かつその事態を引き起こす状況もさまざまなものを想定しているものまである。精神科医療現場で行う危機介入も,電話相談,訪問看護,救急の受診に対する対応などさまざまな場面が想定される。またそれに対し,医師,看護師,ケースワーカーなどの多職種のものが関与する。このように多様な事態にあらゆる職種のものが関与するため,以下では,危機という事態をとりあえず,精神障害者とされるものが,精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがある事態ととらえ,その事態に対し精神保健指定医(以下,指定医)がどのような判断・介入を行ったのかを危機介入とし述べてゆきたい。
さらに,指定医の介入がなされた事例については,さしあたり精神保健福祉法(以下,法)第24条の警察官通報と同25条検察官通報に限って述べる。そしてそのため,2001(平成13)年度厚生科学研究費補助金(厚生科学特別研究事業)「措置入院制度のあり方に関する研究」(主任研究者竹島正)と2002(平成14)年度同「措置入院制度の適正な運用に関する研究」(主任研究者浦田重治郎)の結果から,どのような事例がどのような事態(危機)で措置診察を受けるに至ったかを述べ,さらに残された課題など整理してゆく。
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.