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医学教育改革の世界的潮流の中で
医療制度との関連もあって伝統的,保守的医学教育に固執してきたわが国もどうやら変化の兆しを見せてきた。その現れの1つとして,卒前医学教育におけるコアカリキュラムの導入,卒後臨床研修制度の義務化がある。そのいずれにも精神医学教育は主要な役割の1つを果たすよう位置づけられているのであるが,期待に応えきれるであろうか。保守的なわが国の医学教育を世界的改革の理念と方法とで改善しようとして長年地道な活動をしている団体に日本医学教育学会がある。今回の改革の実現にも同学会指導者は政府審議会の活動に協力することで一定の役割を果たしたと思われる。筆者は長く医学教育の改革にかかわってくる中で,わが国の医学教育の指導者たちと幅広い交流をしてきたのであるが,彼らの大方の意見は,精神医学そのものの医学教育における重要性は等しく認めながらも,現実になされているわが国の精神医学教育には失望とそれによる固定観念ともいいたくなる評価では一致するのである。それをただそうにも,精神医学領域からは医学教育学会に演題発表はおろか,出席も絶無に近い状態が続いてきたのである。今回の精神科研修が卒後研修の必修科目に位置づけられたことはよほどの期待をこめてのことと考えられる。それに正しく応えるには,何をおいても精神医学教育関係者の意識改革と医学教育についての学習が必要である。それを実現するのに精神医学関連団体が主体的に環境づくりに努めることである。臨床研修における精神科研修は精神科医を育てるという目的を持ったものではない。それでもなおかつ,精神科研修を担当することは医学教育全体の改善に参加しようということである。今日の医学教育の改革の潮流は入試,卒前教育,臨床研修,卒後教育,生涯教育に一貫性を実現しようということである(世界医学教育連合:エジンバラ宣言,1988)1)。全体がよくなる中で個もよくなろうという思想である。精神医学教育にかかわる人びとが,自閉のおごりと臆病さから脱するよい機会と考える。
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