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Alzheimer病脳のSDS不溶性成分の分析から未知ペプチドとして見いだされたNAC(non-Aβ component of Alzheimer's disease amyloid)は,cDNAクローニングによりその前駆体蛋白質NACP(NAC precursor)の一部と判明した15)。その後,NACPはシビレエイ神経系で同定されたsynucleinと相同分子であることが判明し,ヒトα-synucleinとも称されている。α-synucleinは140アミノ酸の水溶性蛋白質で,生理的にはシナプス前に多く存在するが,その生理機能は不明である。Alzheimer病において痴呆の程度と最も正相関するのはシナプス数の減少であり,シナプス脱落は初期の段階ですでに顕著にみられる所見である。α-synucleinの分子病理としては,まずAlzheimer病脳の異常神経突起やシナプス終末にα-synucleinが異常に蓄積していることが報告された12)。より巨視的にもAlzheimer病脳の病変部位の分布とα-synucleinが多量に存在する部位の分布が酷似している7)。さらに,初期Alzheimer病脳でα-synucleinの一過性増大が認められた8)。他方,優性遺伝性Parkinson病家系でα-synuclein遺伝子のミスセンス変異2種がそれぞれ疾患原因遺伝子として同定された9,13)。そして,Parkinson病とLewy小体型痴呆脳のLewy小体と,多系統萎縮症の細胞内封入体の主要線維構造がα-synucleinを主成分とすることが示された2,3)。さらには,家族性,孤発性を問わずAlzheimer病脳の約60%がLewy小体,Lewy関連神経突起などのα-synuclein病理を有することが判明した6,10)。したがって,α-synucleinはこれらの変性疾患に共通した病理形成分子と考えられる。
α-synucleinは線維化する性質があり,変異型は線維形成反応が促進される4)。このことはα-synuclein遺伝子に変異のある家族性Parkinson病が若年で発症する事実と対応する。しかし,家族性疾患はまれである事実から,何らかの内在性因子がα-synuclein線維形成を開始,または促進せしめ,Lewy小体などのα-synuclein病理形成を促進する可能性がある。その因子を検討する目的で,α-synuclein結合蛋白質を解析し,α-synucleinの線維化から病理形成に及ぼす影響を検討した。
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