書評
【解説】性同一性障害者性別取扱特例法
黒田 重利
1
1岡山大学大学院医歯学総合研究科精神神経病態学教室
pp.580
発行日 2005年5月15日
Published Date 2005/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100079
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性同一性障害者性別取扱特例法の解説書が著された。本書は第1章から第5章まであり,第6章は参考資料である。
第1章は現在法務大臣をされている南野知恵子議員が本法律への取り組み,経緯を述べられている。南野大臣は本法律の成立に際して中心的役割を果してこられた人である。2000年8月の第6回アジア性科学学会からの本格的なかかわりとその後の経緯であり,とくに2003年2月からの活躍ぶりは驚嘆である。第2章の前半は針間克己氏が性同一性障害の概念,診断基準,関連する疾患,歴史,治療を論じられている。後半は大島俊之氏が法的な諸問題として,性別表記の訂正・変更,望む性での生活体験であるreal life test,名の変更,性別適合手術,婚姻などについて詳述されている。第3章は逐条解説である。各条ごとに趣旨,背景に関して詳しい解説がある。第4章はQ&Aであり,質問事項は58項と多く,およそ予想される疑問点はすべて網羅されている。解答は具体的で,わかりやすい言葉で説明されている。この章は読者が一番に,また繰り返し読む箇所であることは間違いない。第5章は「制定に寄せて」であり,性同一性障害にかかわりの深い原科孝雄,石原理,星野一正,棚村政行,石原明,虎井まさ衛の各氏がそれぞれ寄稿されている。第6章は参考資料であるが,150頁以上の膨大なものである。
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