Japanese
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特集 人工呼吸の新しい展開
人工呼吸と呼吸筋—仕事量と退用性萎縮
Respiratory muscle fatigue and artificial ventilation:Reduced respiratory work by ventilatory support and unloaded muscle atrophy
窪田 達也
1
Tatsuya Kubota
1
1自治医科大学ICU-CCU部
1Department of ICU・CCU, Jichi Medical School
pp.841-847
発行日 1990年9月15日
Published Date 1990/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404910003
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はじめに
人工呼吸は呼吸筋疲労,呼吸筋不全に陥った症例には絶対的適応である。しかし,人工呼吸が患者の呼吸仕事量を完全に肩代りした時,呼吸筋の退用性萎縮が起こる可能性は十分考えられる。一方,ウィニング時に呼吸負荷(負荷仕事量〉が加わると,ウィニングが円滑に進まない場合が多く,呼吸管理上人工呼吸器の患者への負荷を如何に軽減するかが重要な課題となっている。一方呼吸筋萎縮の立場からはウィニング時にある程度の負荷を課して,呼吸筋力トレーニングを行う必要性が提唱されている。この両著の意見の相違をどのように解釈するかは末解決の問題であるが,重要な点は全身の心肺予備力(cardiopulmonary reserve)と呼吸筋の主体である横隔膜の酸素需給バランスと酸素供給予備力に関係しているといえよう。急性重症呼吸不全(ARDS)症例ではこの予備力は小さいのに対して,安定期の症例や子防的呼吸管理症例では予備力は大きくある程度の負荷に耐えられる。現在の人工呼吸管理は完全な筋弛緩を得て調節呼吸を行う急性重症期の一時期を除いて,患者の自発呼吸を優先する換気モード(IMV,PSV,CPAPモード)が多用されている。これは横隔膜の自動運動を尊重するとともに胸郭(肋間筋)とのco-ordinationを維持する上で重要であると考えられる。
本稿では上記の観点から,呼吸筋疲労の成因と各呼吸器疾患との関係人工呼吸の有用性と換気モードの選択,ウィニングと呼吸筋トレーニングなどの問題について言及する。
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