巻頭言
老年医学と未来医療
荻原 俊男
1
1大阪大学大学院医学系研究科加齢医学
pp.1081
発行日 2002年11月15日
Published Date 2002/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902555
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老年医学というと長寿社会,超高齢化時代に対応する医学が連想され,最も花形となるべき分野となるはずであるが,実際の老年医療は介護,看護,福祉などに重点がおかれ,若い医師にとっては必ずしも魅力ある領域とはなっていない.事実,全国各大学にあってしかるべき老年医学教室も20数カ所にとどまり,その後増加する傾向もない.その呼称も老人科,老年医学,老年病学,高齢医学,加齢医学などとまちまちで統一されていない.空籍になった,あるいは新設の老年医学教室の教授選の度に老年医学とは,そのアイデンティティーについてアンケートを取るなどといったことが繰り返されている現状をみると,その真っただ中にいる我々としては全く,身の細る思いである.
21世紀の医学,医療は遺伝子,再生医学,テイラーメイド医療などがキーワードとされ,いずれ日常臨床も様変わりするものと予想される.老年病の多くは生活習慣病の終末像ともいえる.高齢期を迎えるまでに予防,治療が可能となれば,現在の老年病の概念そのものが全く変わることになろう.そのような時代の来ることを夢見て,我々の教室の主要テーマとして生活習慣病,特に高血圧を中心とした循環器疾患および,糖尿病の遺伝子解析,さらにトランスレーショナルリサーチとして生活習慣病の合併症の遺伝子治療の開発を行って来た.
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