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はじめに
物理療法は,温熱,寒冷,電気,力を利用するため,多くの疾患や障害に適応となるが,特定の物理療法に限って使用されている現状がある1).この背景には,物理療法領域の基礎的な研究や臨床的研究が停滞していることが挙げられるかもしれない.研究の停滞は物理療法の科学的根拠の未確立へつながり,臨床で物理療法が活かされていないことになる.しかし,科学的根拠の不足だけではなく,物理療法は機器による治療が中心であり,機器に頼ることへの不安感がセラピストには強いのではないかと考える.このことも物理療法が有効に活用されていない要因の一つではないかと言える.もちろん電気刺激療法や超音波療法では,機器なくして実施は不可能である.しかし,物理療法では他の理学療法と同様に,技術を適用するための思考過程,物理療法の選択,そして適用量(Dose)を決定するセラピストの判断が不可欠である.物理療法の適応を正しく判断できるのであれば,依然有用な治療として多くの物理療法手段を活用することができる.
有効活用するためには,卒前教育と卒後教育が重要となる.卒前には,理学療法を学び始めた学生に物理療法が機器のみで提供されているわけではなく,あくまでもセラピスト主導で行われる積極的な治療であることを教育していく必要がある.また,学生に物理療法への興味と関心をもたせ,知識を総合的に活用した実践的判断力を培うような内容とすべきである.
一方,卒後教育の教育指導体制の遅れも物理療法の発展を減速させている要因と言える.卒後教育では,物理療法を熟知した認定理学療法士や専門理学療法士が少なく,教育・指導するための人材不足も物理療法の発展を妨げている.
このような現状を踏まえると,卒前教育と卒後教育を充実させ,利用者のニーズに合った物理療法を提供できるように教育体制を整備する必要がある.そこで,本稿では卒前・卒後の物理療法教育の課題を挙げ,物理療法の有効的な利用を促すための卒前・卒後教育の方略について考えてみたい.
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