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特集 「結核緊急事態宣言」と対策
結核予防法の妥当性
The Propriety of Tuberculosis Colltrol Law
山岸 文雄
1
Fumio Yamagishi
1
1国立療養所千葉東病院呼吸器科
1Division of Thoracic Disease, National Chiba Higashi Hospital
pp.1089-1094
発行日 2002年11月15日
Published Date 2002/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902557
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はじめに
1919年(大正8年)に制定された結核予防法は,1951年(昭和26年)に全面改正された.1951年当時は,新登録結核患者数は約59万人(人口10万対罹患率約698),死亡者数は約9万3千人(人口10万対死亡率約111)にのぼり,結核は「国民病」として恐れられていた.この結核予防法の改正により,国をあげて結核対策が行われ,1960年代前半からの10年間の結核罹患率は対前年比約11%の減少を認め,結核予防法は十分にその機能を果たしてきた.そして1951年から約50年を経た今日,新登録結核患者数は約4千人(人口10万対罹患率31.0),死亡者数は約2千7百人(人口10万対死亡率2.1)と,罹患率で約1/23,死亡率で約1/53まで減少した1).
しかし最近,結核の改善状況が鈍化していたものが,1997年には新登録結核患者数が38年ぶりに前年に比較して増加し,罹患率も43年ぶりに上昇に転じたことに加え,多剤耐性結核の問題,結核集団感染の多発,高齢者における結核の増加などの問題が出現していることより,1999年7月には厚生労働大臣(当時は厚生大臣)より結核緊急事態が宣言された.わが国の人口構成は少子高齢化が進み,また高齢になるほど結核罹患率は上昇することより,高齢者に焦点を当てた結核対策が重要になってきており,また結核対策技術や認識の進歩が現行の結核対策に十分取り入れられていないこともあり,国の抜本的な結核対策の見直しが必要な時期になってきていた.
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